RevitというのはAutodesk製のBIMソフトのことだが、そこに最近は標準搭載されるようになったDynamoというプラグインがある。DynamoはRhinocerosに対するGrasshopperと同様に、CAD上でのモデリング作業をプログラミングできるツールだ。
CADでプログラミングするというのは何事かというと、階段をモデリングするとか、窓のサッシをモデリングするとか、どうしても繰り返し作業になってしまうモデリング作業をプログラムすることだ。「この点からこの点を結ぶこの線をベースとして○段の階段を作る」といったことをワンクリックで行えるようになる。
RhinoのプログラミングツールであるGrasshopperというプラグインは2010年台から急速に世界中の建築デザインに普及したものだ。上記のような簡単な使い方から、あるルールを決めてとても複雑かつ論理的な形状を生成する使い方、構造計算や環境シミュレーション、遺伝的アルゴリズムによる形状最適化計算にまで応用されている。
最近登場したのがBIMソフトであるRevitのプログラミングツールであるDynamoだ。Dynamoの広報資料でも「Grasshopperのような華やかな使い方がRevitでもできるようになります」というアピールが多い。だが個人的にはDynamoの可能性はそこではないと思っている。
BIMというのはBuilding Information Modelingの略称にある通り、建築要素の形以外の材料や下地、形などの情報を入力し、マネジメントするツールだ。そのため、情報を入力するという点で、普通のCADを使うより「手間がかかる作業」や「繰り返しになる作業」がとても多い。
RhinoでGrasshopperを使うのはせいぜい基本設計までの初期段階だ。それに対しRevitは最終的な建設コスト計算のベースになる詳細設計図にまで使われるソフトだ。建築の図面作成作業は詳細になればなるほど、「手間」や「繰り返し」がとても多くなるのが常だ。
Dynamoはそこを解決できるツールなのではないか。室内にある実験機器に必要な情報を自動で書き込む、図面の番号ナンバリングして整える、展開図に巾木の線を全て一括で入れるなど、詳細図をまとめる際に必須な情報だが、1個1個描き込んでいくには手間と時間がかかる作業を解決してしまえば、設計図作成の時間をどんどん短縮していくことができる。
Grasshopperの華やかさに比べてとにかく地味に聞こえるかもしれないが、地味な図面作業を改善するという考え方は、1つの3次元モデルからあらゆる図面を切り出すというBIMにしかできないことでもある。
PayetteでのインターンではRevitを使った詳細図のまとめ作業に関わったので、上のようなことを考えながら自分の作業を効率化を試みた。特に、インターンのような一番下の立場ではビルの中の全ての部屋の展開図を作るといった、必要だが繰り返しで面倒くさい作業をふられることが多い。
自分はGrasshopperは使ったことがあり、Dynamoも使い方はよく似ているという話だった。しかし、ソフトウエアの特質がまるで違うので、入口はなかなかハードルが高く苦戦した。ただ、徐々に性格をつかんでいくことはでき、WEB上にあるフォーラムのリソースなどを利用しながら、最終的には自分が目的としたプログラムを作ることができた。
作ったのは、「デフォルトでなぜかスラブの下端に合わせて作られる展開図の下端を一括でスラブの上端に合わせる」「シート上のビューのナンバリングを一瞬で綺麗にととのえる」「部屋の内周に一括でモデル線で巾木の線を入れる」という、Revitで図面をまとめたことがある人なら「それあるよね!そういうの欲しかった!」というものだが、使ったことのない人にとっては地味過ぎて理解できないものだ。
しかし、そのツールをPayetteのイントラネット上に公開し誰でも使えるようにしたところ、多くの人からいいね!をもらい、感謝されることができた。全ての図面をBIMでまとめているPayetteにははやり刺さるのだ。今回のインターンではPayetteというBIMが主流のオフィスで修行することで、未来に応用できそうな技術を身につけることができて良かった。
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