前回の記事で説明したプロセスを経て、次の課題は、実際の敷地に対して自分たちのデザインしたものが、どのように活かせるかを考えることだ。
自分たちが発見した敷地は、課題の対象であるオーバータウンに東側の、高速鉄道線路沿いの敷地だ。黒人居住区であるオーバータウンは、昔から常に巨大な交通インフラの介入によって街が分断、細分化されるという憂き目に合ってきたが、2018年に開発された高速鉄道BrightLineもその例外ではなく、地表レベルを走る線路によって街のアクセスはさらに悪くなった。
特に、線路の東側には都心にアクセスするためのモノレールの始発駅があり、オーバータウンの住人が仕事を得るためには都心へ交通利便性が不可欠なのだが、それからもさらに遠ざかってしまうという事態であった。
自分たちのチームはこの交通インフラによって分断された歴史がある割に、それぞれのインフラへのアクセスは極めて不便という状況がオーバータウンの一番の問題だと考え、また線路沿いの敷地が倉庫やテレビスタジオ、化学工場跡地など、都市の裏側のような場所になっていることに着目し、そこでプロジェクトを考えることにした。
まずはモノレールの延伸である。周囲の人口統計に基づいて、高速鉄道の線路をまたぐような位置に駅があれば、利用者数は3倍になるという結果を導き、駅の最適なロケーションを決定した。そこから南北に位置する公園に目を向け、その緑地と駅とのつながりを考慮して建物を配置していく。
駅の側には高い容積の高層ビルや商業施設、駅から遠ざかるに従って低層にしていき、周囲の街との調和を図りながら、コミュニティセンターを配置する。南北の公園とつながる緑道の部分と、集合住宅の憩いの場となるような部分は見通しを操作することでプライバシーをデザインする。言葉で言うと簡単だが、この建物の配置には写真にあるような試行錯誤を何回も行った。
そのような思いを込めながら最終案を提出した。近年は誰もが写実的なレンダリング表現をできるようになったので、差別化を図るためにマイアミや熱帯圏のアメリカのアートを調査し、その土地の匂いを感じるようなアニメ調の絵作りによって空間を表現した。
チームメイトのサムのお陰も多大にあるのだが、今回のスタジオ課題は、日本の大学で学んだこと、実務で学んだこと、そしてGSDで学んだことの集大成のようなもの提出できた。個人的にはかなり満足が高っかったが、この成果に安住せず、突き進んでいきたい。
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