「機械の目」から見えるもの - AI時代の建築デザイン -

今学期はGSDの建築・テクノロジーの准教授であるアンドリュー・ウィット(Andrew Witt)のMechatoronic Optics(機械の目)という授業を取っている。ここでいう機械の目というのは、ニュートラルネットワークやアルゴリズムを利用した画像・映像分析である。

建築分野での応用の面から言うと、まずはリサーチ面が考えられる。ウィットがやっている例であれば、ロンドンの建物のフットプリントを形が似ている同士でグルーピングしてそのレンジをマッピングするというもの。予想通り、長方形の形のものが圧倒的に多くなるのだが、イレギュラーな形を持つものにもかなりのバリエーションが見えてきて面白い。

では「形が似ている」ということはどのように分析するのだろうか?全く同じサイズの長方形でも街の道路にあわせて15度回転しているものを、同じものとして認識させるにはどうすれば良いのか?プロポーションが全く違う長方形を「長方形として似ている」として認識させるには?

一つの方法としては、外形線を内側に等間隔でオフセットしていって、その角をつなげていくことで表れる「スケルトン」を比較することだ。長方形のスケルトンは寄棟屋根の稜線のようになるのだが、スケルトンの分岐の数、線の数を比較することで、長方形という形のあり方を数値に変換することができる。

このように、画像や図形の分析では、その形が持つ情報をどのように数値に変換するか?という点が非常に重要になってくる。この授業を教えるウィットも上記のような分析ができるツールをOpenCVをベースに開発し、Grasshopperルールの"Certain Measures"として公開している。

OpenCVというのは、画像分析系のオープンソース開発されているファミリーのようなもので、最近のこの分野への注目の高さもあり、上記のようなアルゴリズム、ニュートラルネットワークによる分析ツールはどんどん充実していっている。

ニュートラルネットワークを利用したものはPix2Pixと呼ばれる、「ある画像のピクセルをある機械学習によってある画像のピクセルに変換する」というものが一番トレンドになっている。これはインプット画像とアウトプット画像を機械学習させることにより、その目的に特化したエンジンを作ることができる。

クリストファー・ハッセが公開しているWEBサイト(https://affinelayer.com/pixsrv/)では、黒い線を描くだけで猫の画像を自動生成できたり、立面の色を指定するだけでパリ風の建築のファサードを生成できたりするのが面白い。

昨年に同じスタジオを選択していた友達のフランス人学生のスタンの修士論文では、そのPix2Pixの技術を利用して、建築のアパートのプランの自動生成を行っている。形の変化に合わせてプランが変化するさまは衝撃的だろう(https://towardsdatascience.com/ai-architecture-f9d78c6958e0)建築関係者じゃない人が見たら、もう建築家いらないじゃん!となる気がする。

この分野ではいかに単純なアルゴリズムや考え方を応用して、面白いことができるかということが試されている。これらの考え方を知っているか知らないかによって、次の時代への備え方がまるで変ってくるだろう。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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