インターレースするコミュニケーション

先述した「機械の目」の授業の最終課題では、お互いの心臓の鼓動を感知してその距離感を反映するSkypeのようなインスタレーションを行った。

この授業ではOpenCVという一般的に用いらている画像処理、分析プラグインをProcessingというJava言語のプラットフォームで利用した。自分はJavaのコーディングの経験がなかったし、OpenCVももちろん初めてだったので、一つ一つの課題が大きな挑戦であった。

もちろん、コーディングのバックグラウンドがなかったわけではない。大学院時代には建築の環境計測の大量のデータを処理するために、ExcelのVBAをかなり書いていて、それを使って修士論文も書いた。そのため、コーディングの肝というものは理解していた。

それは、初心者としてやるべきことは、既存の例やテンプレートを基本として、それを自分用に少しいじることで、作りたいものを作るのが、一番の近道ということだ。世の中には頭の良い人がたくさんいるので、その人たちの肩の上にいかに立てるかという勝負をするのが重要だ。

今回もそれにならい、悪戦苦闘をしながら、発表当日の午前3時頃(もはや恒例である)になんとか目的のものを完成させることができた。

作ったものは、2者が心拍センサーを持ってWEBカメラの前に立つことで、お互いが見えたり、見えなかったりするSkypeのようなコミュニケーションツールだ。心拍が近いか、異なるかによってお互いのイメージがインターレースする。

そのインターレースした状態で同じ画面上でコミュニケーションをするのは、何かお互いの空間を共有しているような感じがあり面白い。遠隔地にいる空間が重なり合うというのは、空間体験としても特別だ。

今回はGSDの教室の中で、センサーや機材が露出した状態で行ったが、これが抽象的な部屋を作るなどして行うことができたら、もっとインスタレーションとして完成するのではないか。

また、講評では心拍数とインターレースの関係が読み取りにくいのが一番の欠点だということを言われた。このようなハイテクのインスタレーションというのは、自分で発見し、楽しめることが不可欠だ。この点はどんな分野でも共通して大事にして行かなければならない。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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