アブソルート・タワーズ

年始はJapan TrekというGSD学生向け東京ワークショップツアーに主催者側として参加することになった。フライトは単純に価格が安かったので、エアカナダによるトロント乗り換えのフライトにした。だが、乗り換えにしたのがあまり良くない選択だった。

出発の日にはボストンに寒波が来ていた。そのせいでボストンからトロントへ向かう飛行機が1時間半ほど出発が遅れ、乗り換えの時間がもととと短かったのもあり、見事に乗り遅れてしまったのだ。トロントから東京への飛行機はもちろん1日に1便しかないので、プラス24時間をトロントにて待機することになった。もちろんエアカナダには、空港周辺のホテルに無料で泊まらしてもらえた。

どうしようかと考えるうちに、トロントにはアブソルート・タワーズがあることに気づいた。以前にインターンとして勤めていたMAD Architectsが最初に設計した大規模な建物で、アメリカにいるうちに必ずいこうと思っていた建物だ。運良くホテルに近い場所にあるようだったので、Uberで現地に向かった。その周辺に高い建物は少ないので、少し離れたところからも見える。楕円形のフロアを一層ごとに少しずつ回転させることで、とても有機的な形をしている。

現地に着くと、まずはその建物の綺麗さに驚いた。有機的な形状をしているので、ガラスのバルコニーの手すりのバラ付きが目立つかと思ったがそんなことはない。やはりカナダだからか、建設の精度というかレベルがとても高いのだろう。

その日はとても寒かったので、建物周辺を人々がどのように使っているかなどは見ることができなかった。しかし、その地域に住む人には「モンロー・タワー」という愛称をもらっているぐらいなので、その場所のランドマークとしても機能しているのだろう。

また、あまりにもシンプルかつ美しいタワーなので、周辺や隣の普通のマンションが少し滑稽に見えてしまう。雪の中にあると自然の一部のようでもあるし、芸術なのか、建物なのかも曖昧だ。最新かつ独創的な造形の建物でありながら、その存在感をギラギラと示さない佇まいが、その地域の人に心地よいアイディンティティを与えているのかもしれない。

MADは自然や都市と共存する建物のあり方を、曲線でいかに実現するかということにフォーカスしている事務所だ。代表のMaさんの言う"Natural"や"Smooth"という言葉を、建物という普通は四角いものに対して突き詰めると、ここまで傑出したものになるのだと、そのビジョンの射程の長さを実感した。

自分もこのように普遍的で強いビジョンを示せる人間になれるのだろうか。そういう問いかけが、そっくりそのまま、2018年の新年の誓い・目標になりそうだ。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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