フランク・ロイド・ライトの最小限住宅

ワシントンDC方面に旅行をした際に、フランク・ロイド・ライトの設計した住宅を訪問する機会があった。フランク・ロイド・ライトと言えば、近代建築史のビック3のうちの1人で、彼が設計した建物は神戸にある山邑邸にしか見たことがなかった。今回訪問したポープ・レイリー・ハウス日本では名前も出ないようなマイナー作品で、日本語でグーグル検索しても情報は出て来ない。

ポープ・レイリー・ハウスは大金持ちの邸宅ではなく、一般家庭向け(とはいえ中上流ではあるが)を目指した最小限の住宅である。L字型の平面形をしており、交点にあるエントランスを中心に、一方の辺にはリビングやダイニングなどの共用部が、もう一方の辺には寝室などのプライベートな空間があるという、理にかなったシンプルな構成だ。

家の面積は狭いのでそれぞれの部屋はあまり大きくない。ただ、家に入ってからシークエンスで目に入ってくるものや、リビングや寝室などのそれぞれ空間がとても丁寧に設計されていて、狭さというものを全く感じない。

例えば、面積を削るために、リビングダイニングは一室の中に配置されている。しかし座った時の目線の高さや向き、外への視線の抜けなどが緻密に計算されていて、まるで別々の部屋にの中にいるような居心地の良さがある。フランク・ロイド・ライトは紛れもなく天才の建築家なのだが、そういう人が一般の住宅を設計するとこれほどまでに完成度の高い作品ができるのだ。

家の隅々には換気や照明の効率を重視した細かいディテールがあふれている。そういうものの美しさを見ていると、現代の家電に頼った生活によって家の中がどれだけ寂しくなっているかということに気付かされる。

フランク・ロイド・ライトの活躍した時代は機能性を建築で表現することが重視された時代だ。そういう住宅の見学ツアーに参加すると、案内してくれるガイドさんには定番の質問がある。「ここがこういう形状をしているのはなぜだかわかりますか?」というものだ。それをすぐに当てられることはできない。それは、機能というものが、あからさまでなく、華麗にデザインとして落とし込まれているからであり、そんな魅力に溢れている住宅だから可能になる質問なのだろう。                                     

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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