Ladybug+Honeybee

というのは3DCADソフトRhinocerosのプラグインのことで、Rhino上で動くプログラミング言語であるGrasshopperをベースに開発されたものだ。Rhinocerosに対するGrasshopperというものはExcelに対するマクロのようなもので、CADソフトを動かすプログラムを書けるという画期的な機能だ。これが2010年代に急速に世界中に普及したことで、世界中の建築も大きく姿を変えた。

Ladybug+Honeybeeというのは建築環境シミュレーションを目的に開発されたものだ。それまでは3次元モデル上での環境解析といえば、それこそ影を落とすぐらいしかできなかったところを、気象分析から日射量解析、室内の明るさ予測、エネルギー計算までできる。

最初にLadybug+HoneybeeのプロモーションビデオをYoutubeで見た時は、今まで到達することのできなかった夢のような世界が広がっているように感じ、大きな衝撃を受けたことを覚えている。興奮して会社の先輩に見せてその有用性を語っても「川島くんは何になりたいわけ?」とか冷ややかな言葉をかけられたものだ。

もちろん、周囲に使い方を知っている人などいなかったので、開発者のクリス・マッキーがYoutubeに上げたビデオを見ながら使い方を習得した。そして、ペプチドリームというプロジェクトのファサード検討で使い倒すことによって、設計を開始した時には全く想像もできなかったデザインが生まれ、建築主にも気に入ってもらえたことで、そのデザインが現実に建設された。なので、自分にとってはLadybug+Honeybeeの開発者のクリス・マッキーという存在はスーパーヒーローでしかない。

今学期はFacade Optimizationという環境シミュレーションを用いたファサードデザインの授業を選択している。先生はMIT出身のアンドレア・ラブで、省エネルギービルの設計に強いPayetteという事務所で環境シミュレーション部門を立ち上げた人だ。その事務所にクリス・マッキーも所属していて、先日その授業に本人がLadybug+Honeybeeの講習をしに来てくれた。

会ってみれば意外にも若い人で、授業の内容も学者然とておらず、設計者のカジュアルなプレゼンという感じだった。彼が強調するには、環境シミュレーションを使ったデザインに王道というものはなく、その正当化のプロセスはプロジェクトに応じて常に柔軟でなければいけないという。

その思想の自由さというのがLadybug+Honeybeeを作った動機でもあるのだろう。より多くの人がより自由な提案を環境シミュレーションを使いながら行うための基礎を作り上げる。それが、これからの建築を変えるという信念がそこには見える。実際、彼の作ったプログラムは世界中の建築デザインに影響を与え、その姿を変えようとしている。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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