グロピウス・ハウス

3月中旬には春休みとして1週間の休みがあるのだが、その間にスタジオのエスキスが2回もあったのであまり春休みという感じはしなかった。週末の2日間ぐらいは休みをとることにして、その間にボストン郊外のグロピウス・ハウスを訪問した。

ウォルター・グロピウスはバウハウスの元校長で、のちにアメリカに渡ってハーバードGSDの建築の学科長としても教えていた。モダニズムの創始者の1人でもあり、世界で初めて建物のコーナーで窓が交わっているデザインした人でもある。

このデザインが行われたのは工場なので、機能性を重視したモダニズムの考え方がはまったのだろう。この後モダニズムは世界中の建築・工業デザインを席巻することになり、現在の世界中のデザインもその延長線上にある。

そのグロピウスの自宅がハーバードから車で30,40分ほど西にいったところにある。広大な敷地の中に建つ150㎡ほどの小さな家で、予算が限られていたからその大きさになったらしい。

外観は白黒かつ水平性が強調されたデザインで、ザ・モダニズムという感じだ。中に入ってみるとモノトーンを中心に木やアートワークの色でカラースキームがまとまっている。玄関ホールには、床のコルク、壁の下見板、天井の岩綿材と、消音素材が一面に使われていて、来客時や家族が動く時にうるさくならないような配慮がされている。

家の至るところにバウハウスの生徒だったマルセル・ブロイヤーのデザインした家具、照明などが使われ、それがインテリアのデザイン密度を上げている。また、グロピウスを訪問する建築家・芸術家からは事あるごとにその作品が贈られてきたため、どのアートをどこに配置するかについても注意深く決定されていたという。

廻り階段で踏みやすいところに人を誘導する手すりや、丸テーブルのテーブル直径に光をぴったり合わせたダイニング照明など、特定の目的のためにデザインされたディテールがいちいち面白い。建築要素まで、家具の一部のように注意深くデザインされているのだ。家の中ではグロピウス夫妻が日本で購入した用土品もちらほら見え、こういう家の中でもしっかり存在感を出してくる日本のデザインというのもなかなかすごい。

家の中で2か所使われているガラスの間仕切りがとても印象的で、内部空間への光の行きわたり方がとても綺麗だ。80年末に計画された家なのにも関わらず全く古さを感じさせない。モダニズムのデザインは、やはり衰えないということなのか。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

0コメント

  • 1000 / 1000