メニル・コレクション

カーンのキンベル美術館に続いて、もう一つ行きたかったのが世界各地で美術館を設計し続ける、ミュージアム・マイスターのレンゾ・ピアノの初期の作品、メニル・コレクションだ。

この美術館は空間の上にかけられた日射遮蔽のルーバーが特徴で、その複雑な形状によって空間に直射日光が入ることを防いでいる。レンゾ・ピアノのデザインした美術館のその殆どが、ガラスで囲まれた空間をエレガントに日射遮蔽して、自然を取り入れるという点がとてもうまい。

メニル・コレクションはその原型とも言えるもので、日射遮蔽のルーバーとそのディテールに大変な労力がかかっているものだ。断面図から見ても分かる通り、どのような角度から日射が入っても、間接光としてやわらかい光が入るように配慮がなされている。

近年の作品ではルーバーの存在感はどんどん薄れ、簡易なロールスクリーン程度になっているのだが、メニル・コレクションに関しては日射遮蔽をするという行為をどうやって建物のアイデンティティにするかという点が追求されている。

それだけあって、メニル・コレクションのインテリアからは野性味というか、まだ巨匠として確立する前のレンゾ・ピアノの野心と情熱というものがビシバシと伝わってくる。

テキサスの気候における日射遮蔽へのこだわりというものは、先述のキンベル美術館からきたものであろう。キンベルの方が洗練されているのだが、メニル・コレクションではスチールやガラスを使った世界で、より開放的な区間を目指している。

やはり、今よりジャンプアップしようとした情熱のようなものが伝わってくる空間には感じるところがある。成長をしたい、もっと良いものを作りたい、限界を超えたいという意図は、危なっかしいものであるが必ずや人を感動させるものがある。

今までレンゾ・ピアノのデザインした美術館というものはいくつも見てきたが、感動という点ではメニル・コレクションがダントツであった。このような情熱を失わずに、自分も常にデザインに取り組まなければならない。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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