MASS MoCAのSol LeWittコレクション

出国直前の週末には、娘の弓の友達家族と一緒に、アメリカで最大の現代アート美術館であるMASS MoCAを見に行ってきた。娘の友だちと言ってもまだ生まれて8ヶ月なのだ。同じ病院で2日違いで生まれた韓国人夫妻の女の子がいて、それがきっかけで両親同士仲良くなったわけだ。

MASS MoCAはマサチューセッツ州の北西のコーナーにあるため、車で2時間半、実質は赤ちゃんを連れながら休憩したので3時間半ほどかかった。アメリカの例にもれず、行くまでの高速道路も、山道もとても美しいので、楽しいドライブとなった。

Mass MoCAは元々印刷布地の工場として作られた建物をリノベーションしたもので、10何棟もの建物が相互につながってできている。工場を改装して現代美術館を作るというのは、最近ではかなり典型的な手法ではあるが、それがとても大きな規模で行われているので迫力がある。

中でも、Sol LeWittのコレクションは建物一棟を1階から3階まで展示していて、美術館の代表的なコレクションのうちの一つだ。下の階から上の階に上がる中で彼の時代とともにある変遷を楽しめるので素晴らしい。

Sol LeWittは建築家のIMペイの事務所でもグラフィックデザイナーとして働いたことのある現代アーティストだ。コンセプチュアルアートやミニマリズムを代表すると言われている。

彼が特に建築業界で有名なのであるが、それはその初期の作品によるものだ。アート分野出身とは言えど建築事務所で働いていた経験があるためか、建築図面に使うような線でドローイングを描いている。それは、直線や点線、円弧など非常に単純なものなのであるが、それを一定のルールで重ねあうことによって多様な世界を創り出している。

そのミニマリズムの実験というべきものが、建物の壁のスケールで展開されている。そしてその線の正確さ、完璧さがそのようなスケールで実現できていることに迫力を覚えるのだ。安藤忠雄がコンクリートを使い続けるように、単純なものでも他の人ができないレベルにまで極度に洗練させることによって、それはオリジナルとなる。

初期から中期以降へと変遷する過程で、その図形は複雑になり、色も増えて、印象が全く異なるものになっていくのだが、その完璧さやスケールの迫力というものは変わらない。

また、建築空間との調和についても興味深い。これまではSol LeWittの作品は美術館の設定でしか見たことがないのだが、これが都市空間に埋め込まれたらどのような効果があるのだろう。東京の地下鉄の駅の壁とか、照明が暗くて汚い空間ならばどうなのだろう。ただの壁紙のように埋没するのだろうか?

おそらく、スケールのあるものとするのが正解なのだろう。渋谷駅の岡本太郎の壁画ぐらいの大きさだ。Sol LeWittが展開した巨大なスケールでの完璧さと美しさ。それは雑然とした都市空間の中での大きなインパクトを持つに違いない。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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