5月30日にハーバード大学の卒業式が行われた。アメリカの卒業式は日本よりも家族イベントという側面が強く、祝祭的なハレの日という感じだ。アメリカの中でもハーバード大学の卒業式は特に豪華だということだ。
卒業式のスケジュールも内容がたくさんあるし、それぞれが時間がかかるので2日間に渡っている。
初日は「ClassDay」と呼ばれていて、朝からクラス全員の集合写真撮影、翌日の卒業証書授与式の動き方のリハーサルがある。そして午後には卒業生対象の各賞の授与式が行われる。賞にも色々あって建築・ランドスケープ・都市計画など学科別にあったりするので、30ぐらいあるイメージだ。以前に獲得したPlimpton Prizeもこの場で再度表彰されたため、GSDの中でも特に優秀な人達というくくりに入ることができ、とても名誉に感じる。
そして夜には家族を連れてきて学校のロビーで立食パーティが行われ、友達の家族と自己紹介し合いまくるというイベントもあった。特に日本人学生の家族に自己紹介をするのは情報共有ができて楽しい。
2日目がいわゆる卒業式だ。朝7時にGSDのロビーに集まり、校舎の中で列を作る。そして朝9時から始まる卒業式に向けて、ハーバードヤードへと行進するのだ。大学院はビジネスやデザインなど学校ごとに行進をするのだが、学部は所属の寮ごとに行進する。行進の先頭には音楽隊までついているので、なかなか趣がある。
面白いのが、卒業生のローブを着ないとハーバードヤードに入れないというルールだ。全員が同じコスチュームで統一されるので、否が応でも気分が高まる。
ハーバードヤードに卒業生7000人程度が入ると、ついに式典の始まりだ。卒業生のスピーチ(ラテン語のものまである!)や、学長が学校ごとに卒業生の紹介を行う。7000人対象に一人一人卒業証書を授与するわけにはいかないので、略式という形だ。
これが終わったら、昼前には一旦GSDのバックヤードに移動する。ここで、一人ひとりへの卒業証書の授与が行われる。プログラムの長が学生の名前を読み上げ、モーセン学長と一人ずつ挨拶をしていく。そしてこのセレモニーが終われば家族と一緒に昼食を取ることになる。
昼食が終わったら、またハーバードヤードに戻って、祝辞の言葉を聞きに行くのだ。今年はドイツの首相のメルケルが祝辞を述べた。12年間首相を務めた貫禄はやはり半端ではなく、質実剛健を絵に書いたような人格・スピーチの内容で、偉大な政治家とはこのことかと思い知らされた。
アメリカの文化における卒業生代表の言葉やGSDでのスピーチは、個人の体験や思想を必要以上に装飾し、誇張した内容になり、会場も白けた雰囲気になることが殆どなのだが、メルケルは違った。とても単純かつシンプルで、誰もが正しいと思えることを真面目に述べるだけなのだが、その共感力とリーダシップが凄いので、聴衆は真摯に聞き入っていたという形だった。
後日メディアはメルケルが暗にトランプ批判をしたということばかりをニュースで強調していたのだが、実際に聞いていた印象はまるで違うものだった。誰かを攻撃するようなパフォーマンス的な素振りはみじんも見せず、ただただ真摯に本質的なことを述べる。基礎を積み重ねることのパワーを思い知った瞬間であった。
そのあとはヤードの中で記念撮影。留学を支えてくれた妻と、留学中に生まれた娘との写真は何よりの記念だ。もし将来娘がハーバードを卒業することがあれば、同じ場所で写真を取れたらこれ以上のことはないだろう。
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