日本の現代建築史上のパーフェクトヒューマン -槇文彦-大げさなタイトルをつけてしまったが、日本人で2人目のプリツカー賞の受賞者となった建築家・槇文彦ほどバランスのとれたパーフェクトヒューマンはいないと思う。そう思ったのも、セン・クアンの教える日本の現代建築史の授業の2回目のレポートで、槇文彦が1964年にニューオリンズのワシントン大学に所属していた時にパブリッシュした"Collective Form"の理論を取り上げることになったからだ。この論文は、丹下健三門下生のグループによってメタボリズムの思想が1960出版された時に、槇文彦と大高正人が担当したセクシ…31Mar2019
ハーバードから見た日本の現代建築史 -丹下スクールvs篠原スクール その2-一方で、篠原一男は工学主義(technocratic)の丹下スクールが全盛の中、「住宅は美しくなければいけない」と言い切り、丹下スクールのようにモダニズムの視点から日本の伝統建築を捉えることを良しとせず、慈光院に見られるような建築要素と人の精神的な関係性にに注目すべきだと主張する。篠原一男のスタイルは第一から第四と次々に変遷していくが、建築要素を抽象化し実験を行う独特な空間作りは、日本の発展を背負っていた丹下スクールとは全く別の場所で、民主的、芸術的に熟成され、篠原自身のカリスマ性とともに次世代の建築…23Mar2019
ハーバードから見た日本の現代建築史 -丹下スクールvs篠原スクール その1-今学期は日本の現代建築史研究が専門でGSDで博士を取得したセン・クアンの授業を取っている。彼の授業はハーバードGSDの学生への日本の現代建築史のイントロダクションをすることが目的だ。安藤忠雄やSANAAなどが活躍し、磯崎新がプリツカー賞を受賞するなど、日本の建築家の国際的なプレゼンスが高まる中、授業はGSDでもとても人気がある。15人やいっても20人でやるつもりだったものが、履修人数が70人を超えてしまい、初回の授業は立ち見が大量に出るなど、ものすごい熱気であった。一学期を通しての彼の授業の…16Mar2019
ハーバードから見た日本の現代建築史 -ライフ・ストーリーとして歴史を語る-授業の紹介が続くが、今学期は日本の現代建築史研究が専門でGSDで博士を取得したセン・クアンの授業を取っている。彼は東大の隈研吾研究室の助教でもあり、直前まで東大の冬学期で教えていたものと同じものを、GSDで教えているとのことだ。授業の範囲は、明治維新以降から今までの日本建築だ。なぜ日本の建築学科で歴史を学んだ自分が米国のハーバードまで来て日本建築史を学び直すのかと言えば、単純にクアン先生の授業が面白いからだ。日本で学んだ歴史の授業は主に各時代の代表的な作品を扱い、その様式の分析や発展の仕方など…16Mar2019
構造最適化の世界今学期はGSDで2人いるフルタイムの日本人の先生のうち、MDesテクノロジーのエリアヘッドである貝島佐和子先生のクラスを選択している。貝島先生は慶応・MITの建築出身で、ザハやヘザウィックの建築を手掛けるヨーロッパの超有名構造設計事務所のAKTを経て、現在はGSDでテクノロジー系のクラスを教えている方だ。日本の建築関係者なら誰もが気になると思うが笑、アトリエ・ワンの貝島先生とは遠い親戚とのことだ。授業の内容はライノセラスを使った構造のFEM(Finite Element Model)解析だ。貝島先生…09Mar2019
「機械の目」から見えるもの - AI時代の建築デザイン -今学期はGSDの建築・テクノロジーの准教授であるアンドリュー・ウィット(Andrew Witt)のMechatoronic Optics(機械の目)という授業を取っている。ここでいう機械の目というのは、ニュートラルネットワークやアルゴリズムを利用した画像・映像分析である。建築分野での応用の面から言うと、まずはリサーチ面が考えられる。ウィットがやっている例であれば、ロンドンの建物のフットプリントを形が似ている同士でグルーピングしてそのレンジをマッピングするというもの。予想通り、長方形の形のものが圧倒的に多く…02Mar2019