先日、大学からの友人でバイオリニストのみんてぃと一緒にタングルウッド音楽祭に行ってきた。タングルウッドはボストンと同じマサチューセッツ州だが、真西へ200km、車で2時間ぐらいの距離にある。タングルウッドは良く「ボストン近郊」と称されるが、200kmとはまさにアメリカサイズの近郊である。
アメリカでは初めてのドライブになった。というか右側車線で走るのが初めてである。みんてぃが予約してくれた一番安いと思われるレンタカーに乗ったのだが、レンターカー代がこれがまた高い。往復で400kmの長距離なので2人で運転することにしたのだが、ドライバーが1人増えるごとに+50ドルだとか、何かにつけて○○フィーだとか言われ、WEBの表示価格よりかなり上乗せされた値段を支払い、出発した。
道路の速度制限の看板の数字は日本と同じぐらいだが、マイル表示なので実は大分速い。車の速度メーターもマイル表示なので、日本のkmと同じ感覚で数字を追いかけるとかなりの速度が出てしまう。警察による速度超過の取締も日本より断然厳しく、メーターを見ながら慎重に走らなければならない。
右車線の道路は意外と日本より運転しやすかった。自分の場合は「利き目」が右なので、日本で急な右カーブの時はフロントガラスの右のスポークが気になって仕方がないのだが、左ハンドルの車はそういうことがなく、とても快適だ。ただ一つ、ワイパーとウィンカーのレバーが日本と逆についているので、交差点を曲がる度にワイパーを動かしてしまう。その癖は、最後まで治らなかったのだが、無事に目的地につくことができた。
タングルウッド音楽祭はボストン交響楽団が参加する野外のクラシック・ジャズの音楽祭である。コンサートが行われる場所は公園のような形で整備されていて、そこに入るにはコンサートのチケットが必要だ。中心のホールは芝生のグラウンドへと開けた半屋外型で、普通のコンサートホールのように席によって金額が違う。ホールに入らず、芝生を含めた公園にでいるするだけのチケットが一番安い。それでも、木陰の芝生に寝そべればリハーサルの音が聞こえてきて、これが最高に贅沢な体験だった。
リハーサルといっても、お金を払って(とは行っても2000円ぐらい)聞くようなものもある。今回はそれで生ける伝説のようなピンカス・ズッカーマンの演奏を聞くことができた。音は極めて繊細で、どんなに小さい音でも、大きい音でも、全てが精密で、一点の曇りもない、とても心地が良い音色だった。こんな演奏をこんなお手軽に聴けるとは、ボストンに来たかいがある。
夕方が近づくとその日のメインの演奏会への準備が始まる。観客もだんぜん夕方の方が多い。ホールの席ももちろん埋まっているのだが、ホールの外の芝生のグラウンドでも、観客が程よい距離感でピクニックのように陣取る。ワインを開けたり、ろうそくを灯したり、食事をしながら開演にそなえている。
開演15分前にもなると、日も陰ってきていよいよ始まるというような雰囲気が醸成される。まるで日本の花火大会のようだ。屋外で、各自が自由に過ごしているのだが、何か一つの目的を共有して集中力を高めているような雰囲気。そのリラックスした緊張感のようなものがどこか懐かしく、コンサート開始への興奮が高まった。
今回は、ホールの中の席をとって聴いたので、いつものクラシックコンサートと近い体験になってしまった。来年もまたここに来て、今度は芝生エリアで音楽を楽しむことにしよう。
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