旅の最初の目的地はストーム・キング・アートセンターだった。既存の土地の形状を活かした超広大な中に超有名な作家の彫刻が点在している施設だ。Alexander Libermanの作品など、東京では新宿か丸の内の公開空地にどんと置いてあるのを見れるぐらいなのだが、ここではその彫刻にあったスケールの大自然の中で見ることが出来る。すると、アートと周辺環境の対話が明確に見えるのはもちろん、アートと人との関係も都市でのそれより多様になってくる。ランドスケープのスケールというものは、建築とは違う力がある。
ぱちぱちと写真を撮っていると、三谷先生から「ランドスケープは逆光で写真を取るのが良いよ」とアドバイスされた。ランドスケープの写真を取る時は自ずとカメラが下向きになりがちで、順光だと自分の影が写真に入ってしまうが、逆光ではそれがない。加えて、逆光の方が地面の凹凸の影を捉えるので地面のテクスチャが良く映すことができる。アドバイス通り逆光を意識して写真を撮ったところ、いい写真を沢山撮ることができた。
次の目的地はDia: Beaconだ。Dia財団が運営するアート施設で、ナビスコの工場の跡地を美術館として改装したものだ。工場をアート施設にするというものは世界中で確立された手法で、この場所も例外なく完成度が高い。
入口は工場の跡地ということもあり、昔と同じように美術館の目の前に駐車場を配置するしかないのだが、そのランドスケープがかなり丁寧にデザインされていた。車の間にはススキが植わったプランターがあり、車のタイヤを隠す80cmぐらいの高さがある。そのため、車が美術館の前に何台も並んでいても、あまり殺風景にはならず、風景に溶け込むことができている。
また、アプローチの車回しと芝生の領域の境界が、ユニット化された舗装によってぼかされていて、工場の跡地という固いマテリアルとアート施設になった柔らかさというものを調和するという思想が見える。今までは、工場のリノベーションというと中をどう変えてやるかということしか考えられなかったのだが、ランドスケープがいかにその場所の特性を変質させる力があるのかということを強く実感させられる。
帰路につくと、アメリカは高速道路も美しく設計されていることに気づいた。もちろん、高速道路というのは自然を切り開いて作られるものなのだが、その中でも最大限に車路と中間帯、まわりの自然が調和するようにデザインされていることがわかる。三谷先生によれば、高速道路の設計もアメリカではランドスケープ・アーキテクトの仕事なのだという。オルムステッドが100年以上前に確立した職能の厚みというものを刻みこまれた旅だった。
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