都市のグリッドの研究

今学期はジョアン・バスケッツという都市デザイナー・建築家の授業をとっている。HarvardのGSDには都市デザインにおいてビッグ・スリーとでも言うべき教授陣(皆70才以上)がいて、アレックス・クリーガー、ピーター・ロウ、そしてスペイン出身のジョアン・バスケッツだ。バスケッツバルセロナオリンピックのマスタープランなどにも関わっていて、現在の専門は都市のグリッドの研究である。

グリッドというと日本では正直リアリティを感じにくい。日本の大都市は城下町をベースにした構造を持っていることが多く、グリッド状の都市もとい碁盤の目の都市と言えば、京都や札幌などが頭に浮かぐらいだ。なので、日本での授業ではグリッドという視点の説明をあまり聞いたことがなかった。

ただ、世界中の都市に目を向ければ、グリッドの都市はかなりの数がある。そのため、グリッドという視点で分析を行うだけで、それぞれの都市にある開発の背景や、文化の違いを比較することができるのだ。

例えば、ニューヨークのマンハッタンでは19世紀初頭に現在のグッリドの街区が計画された。今でもそのグリッドを崩すことなく都市は発展し続けていて、グリッドというシステムが時代の変化にも耐え得るシステムなのだということがわかる。バルセロナでは、歴史的な街区の外側に巨大なグリッドが計画され、ランドマークを結びつける斜めの道路をシャープに横断させることによって、グリッドの利点とアクセスの良さを両立している。

定義されたグリッドの中に、どのように建物がフィットしていくかというのも都市によって違う。バルセロナの場合はグリッドの外周を建物で埋め、その内側に共有の中庭を取ること例が多い。一方で、ニューヨークの場合はグリッドが細長いので、ペリメーターを埋めれば中庭のスペースは殆どなくなることが多い。

何より面白いのは、グリッドという言語を使えば、世界中の色んなアイディアが総覧できることでだ。グリッドというフィルターで排除されてしまう都市ももちろんたくさんある。ロンドン、パリ、東京という世界のトップ都市もその研究に含まれることはない。

ただ、グリッドというのは都市の構築に関する世界共通の言語であり、いわば英語のようなものでもある。GSDという立場から世界を見渡そうと考えた時に、共通言語で物事を捉えようとするのは至極当然のことだ。

もちろんローカルの言語でないと取得できない大事な情報も山ほどある。ただし、偉大な研究やプロジェクトを理解するための言語がローカルでしかない場合、その良さを知ることができる人はとても限られてしまう。そのため、アメリカに来てから自分の知識をいかにしっかり英語にしておくのが大事がということを痛感することが多い。自分も一回、東京という都市の構造を、世界の共通言語であるグリッドという視点で見た時に、何がわかるかということ知っておかなければならない。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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