シカゴの中心地から地下鉄で20-30分ほど移動した、オークパークという地域にある、フランク・ロイド・ライトが設計して1908年に竣工したユニティ教会に行ってきた。オークパークはフランク・ロイド・ライトが独立後に初めて事務所を設置した場所で、近くには自身の自宅兼スタジオや、設計を手がけた初期の住宅群がある。
ユニティ教会は駅から10分ほど歩いたところにあった。シカゴの典型的な郊外住宅地の中にある地域の教会というような趣だ。宗派はキリスト教から派生したユニテリアン・ユニヴァーサリズムで、もともとそこにあった教会が火事で消失したことから、ライトに設計の依頼があったという。
建物はそれなりに交通量のある交差点に面していて、外から見ると質素なコンクリートの塊のように見える。これは、敷地が狭いために聖堂をどこに配置しても騒音の問題が解決できないからであり、騒音を物理的に最小限にするために質量の重いコンクリートの選択は必須だった。
フランク・ロイド・ライトに依頼された設計の範囲は、建物はもちろん、ステンドグラス、家具に至るまでの全てだとのことで、建物の中に入ると隅から隅までデザインされた迫力のようなものが一気にのしかかってくる。
特に、聖堂の中のインテリアは超絶技巧としか言いようがない。超絶技巧なんて言葉はピアニストにしか使われないような気もするが、とにかくものすごい。
聖堂は二階席のある劇場空間のようなスペースだ。窓は二階席の上部のハイサイドライト及び、天井にあるグリッド状の天窓しかない。つまり、その下にある高さ5-6mの空間は全てライトの手によってデザインされた面で構成されているということだ。しかし、そんなことは微塵も感じさせない豊かさに満ちているのだ。
家具から、階段から、巾木から、手すりから、照明に至るまで、ライトのデザインした幾何学模様が縦横無尽に走り回る。ある線と線は平行に走り、あるものは交わり、あるものは枝分かれしながら三次元的に空間を覆い尽くす。
ある要素をデザインしすぎるととたんにアンバランスになってしまうものだが、ライトはデザインをどこで止めるかというバランス感覚が非常に優れていて、これだけデザインされた空間なのにも関わらず、全体がバランスの取れた美をしっかり体現している。
一方で、これほどまでに空間の一つ一つの部分が魅力的に見える建物もないだろう。ステンドグラス1枚のデザインにズームインしても、空間全体にズームアウトしても同じように感動してしまう。
ユニティ教会は、その宗派の影響もあるのかもしれないが、全ての線、面のデザインが直線による幾何学デザインで構成されている。ミース・ファン・デル・ローエやフランク・ゲーリーによれば、ユニティ教会を世界で最初のモダニズム建築だとのことだ。
フランク・ロイド・ライトがユニティ教会を竣工させたのは41歳。これほどの建物を「初期の名作」と言わせてしまうライトの才能にはただただ驚くばかりである。
アメリカは、ゼロからその土地に何かを作るということを繰り返し続けてきた国だ。コンテクストや文化をよりどころとしないパワーを、ビシバシと感じさせられた建物だった。
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