地下鉄での出来事

ああここはアメリカなんだなと感じる出来事が、ボストンで地下鉄を待っている時にあった。

平日の18時ごろにインターン先から地下鉄で家に帰るつもりでホームで並んでいた。電車が遅れていることと、帰宅ラッシュの時間に重なったことで、ホームの上は人で溢れ、熱気が充満している。

その時、冷房があまり効いていないホームでいつも回っている扇風機に誰かがぶつかったらしく、回転する羽に何かが挟まる「ダダダダダダッ」という音がした。

自分は普通に、ホーム上が混んでるからだれかが間違って扇風機にぶつかったんだなと思い、そう思って平然としていた。しかし、周りにいる人達の反応がまるで違う。恐怖にすくんでいるような空気感がある。

そこで気づいたのが、扇風機にものが巻き込まれた音が、自動小銃の音にそっくりだということだ。日本で町中で自動小銃が乱射されることはほぼ起こらないのでそんなことは想像もつかないのだが、アメリカでは自分の生活の隣にあるとてもリアルな出来事なのだ。

周りにいた人たちはそれが自動小銃の音でないということを確認した後、またいつもの平穏な空気に戻っていった。

ボストンはとても安全な街なので、ともすれば日本に暮らしている感覚でそのままいてしまう。しかし、現地に住む人は生活の危機意識に関して全く別の感覚を持っている。

これほど無差別殺人が頻繁に起こる国なのに、なぜ銃規制が進まないのかは全くの謎である。しかし、そのような二面性がアメリカの本質なのだなとも思う。一方では自由や開放を叫びながら、一方では「学校での銃の乱射を防ぐためには、教師側も銃で武装すれば良い」などという議論が至極当然に行われる国でもある。

アメリカは人種が差別やその撤廃に関して象徴的な国であるが、現実には人種間の衝突が日常的に頻発に起こる国だ。キャンパスや飲み屋でつるんでいるグループを見ても、基本的には同じ人種で固まっているし、職業に関する人種間差別も多い上、それがあからさまに目に見えてしまうのがアメリカだ。

生活のすぐ隣にある恐怖や不条理というのが自由の国アメリカの1つの姿なのだろう。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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