アンディ・ウォーホル美術館

夏休み前にピッツバーグでアンディ・ウォーホル美術館に行く機会があった。アンディ・ウォーホルとは、ピッツバーグ出身の言わずとしれたポップ・アートの父である。

アンディ・ウォーホルの言質としてよく取り上げられる「僕を知りたければ作品の表面だけを見て下さい。裏側には何もありません」で述べられているように、社会で流行っているもの、大量に流れる情報の表層的なイメージを、徹底的に表層的に描くという表現を発明し、極めた存在とも言える。

アートを作るアプローチを、有名な写真を切り取って、色やプリントの精度の変えながら繰り返すという、言ってしまえば小学生でもできるような手法にまで落としこんだのはものすごいことだ。一方で、単純な手法だからこそセンスが試される。もとは商業の広告やディスプレイデザイナーとして売れっ子だったようで、その時代の作品を見てもセンスの良さが際立っていが、ウォーホルの凄さはそこにはアーティストとしての才能に加えて、自分自身のブランド化のうまさが飛び抜けているのだろう。

アンディ・ウォーホル美術館はピッツバーグの古い建物を改修したもので、ロビーに入ると、そこにはニューヨークにウォーホルが構えていたアトリエと同様に、全てが銀色でペイントされた空間だ。ただ銀色に塗る、というのはとても単純なアイディアなのだが、それがビルの古びた内装に重なることで、何とも言えない高揚感を醸し出す。愚直な繰り返しのパワーというものはウォーホルの作風に共通するものでもある。

この美術館では彼の作品が総覧できるのだが、やはり好きだと思えるのは有名人をモチーフにしていて、それ以上でもそれ以下でもない単純な作品だ。彼はモチーフの選び方について、「それが有名で皆も自分も大好きだから」という理由を述べていて、明快で清々しい。単純明快さがウォーホルの魅力だ。

古典的な絵画にあるような重々しさ、重力とも呼べるようなもの意味的にも物理的にも取り払い、ペラペラな存在としてのアートを1960年代に提案した業績はすごい。実際に人気があるのが、それが正しかったこと、時代の要請に応えたものであることを証明している。昨今のインスタグラムの流行ともつながるところがある。

建築もその革命に追いつかなければならないと思う。その実践ができているのは隈研吾ぐらいか。今の建築業界では「表面的なもの」は蔑まれがちなのであるが、ウォーホルのことを考えると全否定するわけにもいかなくなる。

GSD World - ハーバード大学建築・都市デザイン留学記

建築と都市デザインをハーバード大学デザイン大学院(GSD)で勉強する川島宏起のブログです。

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