ルイス・カーンによる代表作中の代表作だ。この建築は人生の中で一度は見ておきたい建築のうちの一つであった。
ソーク研究所はロサンゼルスの市内から2時間ほどドライブしたところにある。ポリオウイルスに対抗するワクチンを開発したジョナス・ソーク博士が設立した生物医学系の研究所で、ノーベル賞受賞者も数々輩出している名門だ。見学の日程は限られていて、ソーク研究所の見学予約が取れたところにあわせて、ロサンゼルス旅行の日程を組んだぐらいだ。
建物の最大の特徴は、太平洋を望む中庭空間だ。それを挟み込むようにして建つルイス・カーンの設計した建築も確かに格好良いのだが、そこにいる人が見るものは建築ではなく、建築によってフレーミングされた海や、空、雲、天気の移り変わりなどである。建築のデザインによって、自然と人間が特別な結びつきを持つ空間がデザインされているのが素敵だ。
中庭に面するのはプリンシパル研究者が入る個室群で、その後ろに巨大な一室空間のラボが控えるという構成だ。実際に行ってみると中庭空間だけでなく、個室とラボの間の通路空間も3次元的に造形的で魅力がある。
この建物が完成から50年経っても最先端の研究所として使われ続けているのは、当時としては画期的な設備フロアを採用したことに尽きるだろう。ラボ上部の天井裏は1階分の高さが確保されてあり、そこに研究設備用の配線、配管の設置・更新が簡単にできるようになっている。これは最新の研究設備と同じスペックとも言え、このようにバックヤードの設計がしっかりしているからこそ、メインの研究所の建物が美しく使い続けられるのだろう。
中庭空間の向こう側には、地形的に一段下がったテラス空間があり、太平洋へと開いた空間で研究者がランチやディスカッションを楽しんでいた。この建物のすごいところは、中庭空間はどこまでも美しく純粋にしながら、建物の至るところに人の居場所をしっかりデザインすることで、美しすぎて不自由という事態がなるべく起きないようにしていることだろう。
何はともあれ、ソーク研究所の素晴らしいところは、建築が自然と人間をつなぐメディアとして機能していることである。自分が興味のある環境建築のデザインでも、いかに自然と人間の間を摩擦を減らすかというのが一番大事なところだ。自分の中でも、自然と人間をつなぐメディアとしての美しさ、機能性を両立した建築のデザインは今後も追求していきたい。
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