夏休みの間にイエール大学のあるニュー・ヘイブンに行く機会があった。ボストンから車で2時間半ほどの距離にあり、建築に興味があるのであれば是非行った方が良いという、誰もがおすすめする場所だ。
ニュー・ヘイブンの綴りはNew Havenで、天国を意味するHeavenとは微妙に違っている。Havenは港を意味し、ボストンやニューヨークに次ぐ新しい港町という位置づけだったのだろう。ネイティブスピーカーの人に聞くと、天国の方をヘブンと発音するのであれば、ヘイブンの方が近いらしい。
ニュー・ヘイブンはピザが有名で自分たちはフランク・ペペ・ピッツェリアという場所で食べた。これは地元っ子の中での三大ピザ屋のうちの一つで、ニュー・ヘイブンの人たちはその三つのうちで何派かというのではっきりと分かれているらしい。
この街に来たのはイエール大学による建築群が目的だ。その中でもイエール英国芸術センターは、ソーク研究所と同様のルイス・カーンの設計である。ルイス・カーンは幾何学的なパターンで建築を構成するのが得意で、このビルもグリッドや正円などをベースに空間がデザインされている。
最上階の展示室に行くと、グリッドによる平面構成がとてもわかりやすい。一つ一つの部屋のセルにトップライトがあるので、心地が良く抜け感のある空間だ。自然光が豊かなので、絵の色彩もとても鮮やかに、豊かに見える。
ルイス・カーンの建物には何か時代を超えた美しさを感じる。何も足せない、何も引けない美というのがそこにはある。トラバーチンの大理石と鉄筋コンクリートと木の仕上げ以外の素材は基本ないのだが、決して奇抜ではないのに単純に美しいというのがすごい。
建物はディテールとプロポーションだけで美しくなるという模範的な例だろう。ルイス・カーンの建物には何かバッハのような確固とした理論や信念があるようにも見える。そんな、正統派ルイス・カーンの実力が最も発揮されているのが、イエール英国芸術センターなのかもしれない。
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