メニル・コレクションカーンのキンベル美術館に続いて、もう一つ行きたかったのが世界各地で美術館を設計し続ける、ミュージアム・マイスターのレンゾ・ピアノの初期の作品、メニル・コレクションだ。この美術館は空間の上にかけられた日射遮蔽のルーバーが特徴で、その複雑な形状によって空間に直射日光が入ることを防いでいる。レンゾ・ピアノのデザインした美術館のその殆どが、ガラスで囲まれた空間をエレガントに日射遮蔽して、自然を取り入れるという点がとてもうまい。14Apr2019
キンベル美術館3月中旬の春休み時期を利用して、テキサスの建築を見に行った。日本人にとってテキサスと言えば最も典型的な「アメリカ」の象徴のような場所だろう。こちらのテレビ番組でも、日本で言えば関西人同士で連帯感が生まれるように、テキサス出身と出演者が言えば何某かの連帯感が生まれているように見える。テキサスはボストンからだと飛行機で4-5時間かかり、国内線としてはかなり長い部類に入る。娘が5ヶ月になり初めてのフライトだったが、それほど問題なくやり過ごすことができた。到着地のダラス・フォートワース空港は、世界でも有数の大きさの空港だ。テキサスの中の大都市であるダラスとフォートワースのちょうど中間に位置している。もちろん、テキサスでの旅行では公共交通機関...06Apr2019
日本の現代建築史上のパーフェクトヒューマン -槇文彦-大げさなタイトルをつけてしまったが、日本人で2人目のプリツカー賞の受賞者となった建築家・槇文彦ほどバランスのとれたパーフェクトヒューマンはいないと思う。そう思ったのも、セン・クアンの教える日本の現代建築史の授業の2回目のレポートで、槇文彦が1964年にニューオリンズのワシントン大学に所属していた時にパブリッシュした"Collective Form"の理論を取り上げることになったからだ。この論文は、丹下健三門下生のグループによってメタボリズムの思想が1960出版された時に、槇文彦と大高正人が担当したセクションを元にしたものである。槇文彦は"Collective Form"の中には"Compositional Form"と"Mega-S...31Mar2019
ハーバードから見た日本の現代建築史 -丹下スクールvs篠原スクール その2-一方で、篠原一男は工学主義(technocratic)の丹下スクールが全盛の中、「住宅は美しくなければいけない」と言い切り、丹下スクールのようにモダニズムの視点から日本の伝統建築を捉えることを良しとせず、慈光院に見られるような建築要素と人の精神的な関係性にに注目すべきだと主張する。篠原一男のスタイルは第一から第四と次々に変遷していくが、建築要素を抽象化し実験を行う独特な空間作りは、日本の発展を背負っていた丹下スクールとは全く別の場所で、民主的、芸術的に熟成され、篠原自身のカリスマ性とともに次世代の建築家に大きな影響を及ぼすようになる。伊藤豊雄やSANAAは本人たちも明言するように篠原一男から大きな影響を受けている。例えば、SANAA...23Mar2019
ハーバードから見た日本の現代建築史 -丹下スクールvs篠原スクール その1-今学期は日本の現代建築史研究が専門でGSDで博士を取得したセン・クアンの授業を取っている。彼の授業はハーバードGSDの学生への日本の現代建築史のイントロダクションをすることが目的だ。安藤忠雄やSANAAなどが活躍し、磯崎新がプリツカー賞を受賞するなど、日本の建築家の国際的なプレゼンスが高まる中、授業はGSDでもとても人気がある。15人やいっても20人でやるつもりだったものが、履修人数が70人を超えてしまい、初回の授業は立ち見が大量に出るなど、ものすごい熱気であった。一学期を通しての彼の授業のフレームワークは丹下スクールvs篠原スクールという構図だ。もちろん議論の余地は多分にあるだろうが、クアン先生もこれはあくまでハーバードの学生に説...16Mar2019
ハーバードから見た日本の現代建築史 -ライフ・ストーリーとして歴史を語る-授業の紹介が続くが、今学期は日本の現代建築史研究が専門でGSDで博士を取得したセン・クアンの授業を取っている。彼は東大の隈研吾研究室の助教でもあり、直前まで東大の冬学期で教えていたものと同じものを、GSDで教えているとのことだ。授業の範囲は、明治維新以降から今までの日本建築だ。なぜ日本の建築学科で歴史を学んだ自分が米国のハーバードまで来て日本建築史を学び直すのかと言えば、単純にクアン先生の授業が面白いからだ。日本で学んだ歴史の授業は主に各時代の代表的な作品を扱い、その様式の分析や発展の仕方などについて体系的な知識を獲得することに時間かける。クアン先生の場合はあくまで「人」にフォーカスし、その人が出会ったもの、影響を受けたもの、言った...16Mar2019
構造最適化の世界今学期はGSDで2人いるフルタイムの日本人の先生のうち、MDesテクノロジーのエリアヘッドである貝島佐和子先生のクラスを選択している。貝島先生は慶応・MITの建築出身で、ザハやヘザウィックの建築を手掛けるヨーロッパの超有名構造設計事務所のAKTを経て、現在はGSDでテクノロジー系のクラスを教えている方だ。日本の建築関係者なら誰もが気になると思うが笑、アトリエ・ワンの貝島先生とは遠い親戚とのことだ。授業の内容はライノセラスを使った構造のFEM(Finite Element Model)解析だ。貝島先生がAKT所属時に事務所で用いた構造設計プログラムを、RhinoのGrasshopperのプラットフォームに移植したMillipede(h...09Mar2019
「機械の目」から見えるもの - AI時代の建築デザイン -今学期はGSDの建築・テクノロジーの准教授であるアンドリュー・ウィット(Andrew Witt)のMechatoronic Optics(機械の目)という授業を取っている。ここでいう機械の目というのは、ニュートラルネットワークやアルゴリズムを利用した画像・映像分析である。建築分野での応用の面から言うと、まずはリサーチ面が考えられる。ウィットがやっている例であれば、ロンドンの建物のフットプリントを形が似ている同士でグルーピングしてそのレンジをマッピングするというもの。予想通り、長方形の形のものが圧倒的に多くなるのだが、イレギュラーな形を持つものにもかなりのバリエーションが見えてきて面白い。02Mar2019
「機械の目」今学期はGSDの建築・テクノロジーの准教授であるアンドリュー・ウィット(Andrew Witt)のMechatoronic Optics(機械の目)という授業を取っている。彼の授業が扱うのは、最近トレンドになっている、アルゴリズムやニュートラルネットワークによる画像分析と、それのデザインへの応用だ。かなりホットな分野ということで、授業の履修はかなり人気があるが人数制限もあるため、キャンセル待ちで12番目というような状態だったが、なんとかねじ込んで履修することができた。授業は「機械がどのように世界を知覚することができるか?」という大きなテーマに沿っているので、人がどのように世界をとらえようとしていたのかという話から、最先端のテクノロジ...23Feb2019
Northeastern大学 ISECPeyetteの代表的なプロジェクトがボストン市内のNortheastern大学の新しいサイエンスの研究棟、Interdisciplinary Science anad Engineering Complexだ。外観も内観もとてもアグレッシブなPayetteを代表する建物で、今回の視察の前にももちろん知っていたが、視察をきっかけに初めて実際に訪れることができた。市の中心部からは地下鉄で15分ぐらいで行ける距離にあるので、とても便利である。16Feb2019
ボストンの環境建築巡り年末には、大学の恩師である東京大学の前真之先生率いる視察団がボストンに来た。前先生は建築のサステイナビリティ、省エネルギー、パッシブデザインの専門家(http://maelab.arch.t.u-tokyo.ac.jp/)で、学生にデザインの実践とエンジニアリングの基礎を教えることのできる、日本の中でも数少ない研究室のうちの一つだ。研究室がスタートした10年ほど前、日本の環境建築があまりにも虚構と建前に溢れていることに衝撃を受け、環境建築とは、未来に残すべき建築とは何かを考えるのが研究室のミッションだ。そのため、世界中のトップレベルの環境建築を巡り、各地の学者と意見交換を続けている。世界の建築の文化はその気候とともにユニークに形成さ...09Feb2019
海外設計事務所向けポートフォリオの作り方2月の頭からは夏のインターンシップの採用が始まる。自分の過去の作品やGSDで取り組んだ作品を、今まで学んだGSD的美学のもとに再構成して、ポートフォリオとしてまとめた。(https://issuu.com/hkawashim/docs/hk_2019) 留学にいく前にまとめた、日本風のムチムチに詰まったポートフォリオと比べれば、その差は歴然だ。(https://drive.google.com/file/d/1jF7mWPukZ_U1h-kJlDf3z1TwH6PCXIYr/view?usp=sharing)海外の建築学校がほとんどアートスクールに所属していることは前に説明した通りだ。そのため、密度の高さが重視されるのは当然のことだ...02Feb2019