グロピウス・ハウス3月中旬には春休みとして1週間の休みがあるのだが、その間にスタジオのエスキスが2回もあったのであまり春休みという感じはしなかった。週末の2日間ぐらいは休みをとることにして、その間にボストン郊外のグロピウス・ハウスを訪問した。ウォルター・グロピウスはバウハウスの元校長で、のちにアメリカに渡ってハーバードGSDの建築の学科長としても教えていた。モダニズムの創始者の1人でもあり、世界で初めて建物のコーナーで窓が交わっているデザインした人でもある。このデザインが行われたのは工場なので、機能性を重視したモダニズムの考え方がはまったのだろう。この後モダニズムは世界中の建築・工業デザインを席巻することになり、現在の世界中のデザインもその延長線上に...30Mar2018
メタボリズムの願いスタジオの敷地となっている鄭州(ZHENGZHOU)は日本発の建築思想であるメタボリズムによる都市計画が行われた都市のうちの1つだ。日本国内ではメタボリズムの思想に沿って建設された建物は数多くある一方で、都市規模のものは存在しない。メタボリズム(新陳代謝という意味)は1950-60年代に構想された思想で、戦後復興の中で急速に姿を変える日本の社会に対応しながら、生き物が新陳代謝するように、時代を経て姿かたちを変えていく建築・都市のシステムを提案したものである。典型的な例として銀座の中銀カプセルタワービルが挙げられる。構造と設備を担うシャフトにカプセル型の部屋がぐるりと接続されるという形式を持つ。1つ1つの部屋のニーズや老朽化に合わせて...25Mar2018
ルイス・バラガンの自宅ルイス・バラガンというのはメキシコを代表する建築家で、その自宅が世界遺産である。20世紀の邸宅が世界遺産となっている例は多いが、建築家の自宅そのものが世界遺産になっているのは珍しい気がする。ルイス・バラガンはメキシコの気候に呼応した色使いと、自然との繋がりの作り方の名手である。鮮やかな青や黄色、ピンクやオレンジの色が家中にふんだんに使われているのだが、それが派手に見えるどころか、スッキリと見えてしまうのだからすごい。ガイドさんによるとバラガンはなんと土木学科の出身であり、ほぼ独学で建築を学んだのだという。孤独を好む「嫌な人」だったらしく、バラガン邸に友人を招くことはかなり稀だった。その人となりを語るエピソードのほとんどが、当時邸宅で...15Mar2018
世界のメトロの比較今学期は先に書いたジョアン・バスケッツという建築家・都市計画家の設計スタジオをとっている。敷地は、日本の建築家の黒川紀章が都市計画を手がけた、中国の鄭州(ZHENGZHOU)を対象にしている。鄭州は古代の殷王朝の首都だったことがあるぐらいで、北京や上海に比べて長い間小さい都市だった場所だ。地理的には中国の主要都市の中心に位置していて、1950年代に中国全土を走る鉄道が整備された後に、工業や運輸の中心として発達した。この60年間で鄭州のサイズは指数関数的に拡大し、75倍にもなったとのことだ。2000年台後半には黒川紀章が設計した鄭東新区という東側の区域が着工し、現在も建設が続いている。そのスケールがあまりにも大きく、入居が追いついてい...08Mar2018
フランク・ロイド・ライトの最小限住宅ワシントンDC方面に旅行をした際に、フランク・ロイド・ライトの設計した住宅を訪問する機会があった。フランク・ロイド・ライトと言えば、近代建築史のビック3のうちの1人で、彼が設計した建物は神戸にある山邑邸にしか見たことがなかった。今回訪問したポープ・レイリー・ハウス日本では名前も出ないようなマイナー作品で、日本語でグーグル検索しても情報は出て来ない。ポープ・レイリー・ハウスは大金持ちの邸宅ではなく、一般家庭向け(とはいえ中上流ではあるが)を目指した最小限の住宅である。L字型の平面形をしており、交点にあるエントランスを中心に、一方の辺にはリビングやダイニングなどの共用部が、もう一方の辺には寝室などのプライベートな空間があるという、理にか...05Mar2018
雪にも負けずボストンは寒い寒いと警告され続けてきたので、どれだけ寒いのかと冬の前からずっと気構えていたのだが、結論としてはやはり寒かった。2017年末に寒波が来た時は日中の最高気温が-10度を下回るのが普通。外出する時は太陽が出ている間にいかに用事を済ませるかということが至上命題だった。特に、-20度程度の気温の中で正面から風が吹いてくると、顔が痛くて本当につらい。日本にいた時は、ダウンジャケットのフードやその先端についているファーなどは装飾としか認識していなかった。しかし、ボストンではそれらはれっきとした防寒アイテムであり、使うだけでどれだけ暖かさが増すかということを身を持って実感することとなった。ボストンは公共交通期間が充実していてコンパク...01Mar2018