歴史をひもとく絵City by Designという1回ごとに都市デザインプロジェクトを紹介するオムニバスの授業を今学期は必修として選択していた。この授業ではプロジェクトをデザインした人自身がGSDに来てプレゼンをしてくれるので、プロジェクトを進める際の地域住民との折衝の肌感覚というものまで伝わってきて面白い。授業を選択した学生に対しては、その中から1つのプロジェクトを選び、分析をすることが課題となる。都市デザインプロジェクトというものは、土地の歴史や敷地周辺の文化などに大きく影響を受けるものだ。その背景を分析させることで、今後都市デザインプロジェクトに関わる学生の知識発達に役立てるという狙いなのだろう。自分が選択した、というか選択が早いもの勝ちの残...08May2018
波打つファサード今学期はファサード・オプティマイゼーションというタイトルの環境エンジニアリング系の授業を選択した。最終課題は、既存のビルを自由に選択して省エネルギー改修提案をするものである。個人でもグループワークでも良かったので、夏の英語の授業で一緒だったBohanとチームを組んだ。テーマにしたのはル・コルビュジェやオスカー・ニーマイヤーが設計に関わった、ニューヨークの国連本部ビルである。このビルは東西に長辺を向けた扁平の形状をしたガラス張りのビルで、1951年に入居が開始した直後から、東からと西からの直射光の強さに仕事どころではないことがわかったという。04May2018
新しい可変性今回選択した中国鄭州を敷地とした都市設計スタジオは、まるでマラソンのようなスタジオだった。スタジオの初めから膨大な量のリサーチが求められ毎週そのチェックがあった上、中間講評、中国での発表と敷地調査、そして最終講評が1ヶ月ごとにあり、常に一定の速度で走り続けなければ到底こなせる量ではなかった。最終的に設計を行ったのは、黒川紀章の設計した車中心の交通インフラを軸としたメタボリズムの都市計画が行われた地域だ。この地域は鄭東新区と呼ばれる場所で、交通、ランドスケープ、建物が全て上手に設計されている。しかし、綺麗に整理されすぎていて建物の形も全て同じようになってしまい、不気味な都市空間となっている。そもそもメタボリズムというのは、西洋のモダニ...01May2018
ル・コルビュジェ展@ソウル1年以上前の話になるが、ソウルにあるハンガラムデザイン美術館にて行われたル・コルビュジェ展に行ってきた。これだけ大規模な展覧会が行われるのはアジアでも珍しいのだが、たまたまソウルに行く用事とタイミングがあったので、運が良かった。29Apr2018
スタジオ旅行で鄭州へ今学期は中国本土中心に位置する都市である、鄭州がテーマのスタジオをとっている。黒川紀章が設計した鄭東新区を含めた新しい軸線をどうデザインするかがテーマである。3月の末から4月の頭にかけて、敷地見学+調査をのための7日間のスタジオ旅行があった。スタジオ旅行はGSDが飛行機代、ホテル代をカバーしてくれるので、こちらは参加費の3万円+現地での食費・交通費を払うだけだ。現地でもスタジオのスポンサー企業が食事を提供してくれたりするので、実際は殆どお金を使うことがなかった。高い学費を払っているのだから、スタジオには積極的に参加して、こういうところで取り戻したいものだ。ボストンから鄭州への直行便はもちろんないので、フライトは上海を経由した。旅行の...21Apr2018
コラージュの力リサーチ結果であるとか、設計の思想を示すための手法には図面、パース、ダイアグラムなどがある。アメリカで一般的なものとしてもう一つ、コラージュという手法がある。コラージュというのは、写真を切り抜きつぎはぎして組み合わせるもので、図面などでは説明しきれない、その時代の様相を示す際に使われることが多い。コラージュは日本の建築分野では一般的でないため、最初はそのやり方も目的も良くわからなかった。図面はデータや形状を示すため、ダイアグラムはその理解や分析を示すためにあるので、それらで十分ではないかとも思う。ただ、図面やダイアグラムなどを読み込むスキルがある建築・都市学生だけんでなく、もっと多くの人にダイレクトに伝えるためには、写真のコラージュ...14Apr2018
Ladybug+Honeybeeというのは3DCADソフトRhinocerosのプラグインのことで、Rhino上で動くプログラミング言語であるGrasshopperをベースに開発されたものだ。Rhinocerosに対するGrasshopperというものはExcelに対するマクロのようなもので、CADソフトを動かすプログラムを書けるという画期的な機能だ。これが2010年代に急速に世界中に普及したことで、世界中の建築も大きく姿を変えた。Ladybug+Honeybeeというのは建築環境シミュレーションを目的に開発されたものだ。それまでは3次元モデル上での環境解析といえば、それこそ影を落とすぐらいしかできなかったところを、気象分析から日射量解析、室内の明るさ予測、エネル...02Apr2018
グロピウス・ハウス3月中旬には春休みとして1週間の休みがあるのだが、その間にスタジオのエスキスが2回もあったのであまり春休みという感じはしなかった。週末の2日間ぐらいは休みをとることにして、その間にボストン郊外のグロピウス・ハウスを訪問した。ウォルター・グロピウスはバウハウスの元校長で、のちにアメリカに渡ってハーバードGSDの建築の学科長としても教えていた。モダニズムの創始者の1人でもあり、世界で初めて建物のコーナーで窓が交わっているデザインした人でもある。このデザインが行われたのは工場なので、機能性を重視したモダニズムの考え方がはまったのだろう。この後モダニズムは世界中の建築・工業デザインを席巻することになり、現在の世界中のデザインもその延長線上に...30Mar2018
メタボリズムの願いスタジオの敷地となっている鄭州(ZHENGZHOU)は日本発の建築思想であるメタボリズムによる都市計画が行われた都市のうちの1つだ。日本国内ではメタボリズムの思想に沿って建設された建物は数多くある一方で、都市規模のものは存在しない。メタボリズム(新陳代謝という意味)は1950-60年代に構想された思想で、戦後復興の中で急速に姿を変える日本の社会に対応しながら、生き物が新陳代謝するように、時代を経て姿かたちを変えていく建築・都市のシステムを提案したものである。典型的な例として銀座の中銀カプセルタワービルが挙げられる。構造と設備を担うシャフトにカプセル型の部屋がぐるりと接続されるという形式を持つ。1つ1つの部屋のニーズや老朽化に合わせて...25Mar2018
ルイス・バラガンの自宅ルイス・バラガンというのはメキシコを代表する建築家で、その自宅が世界遺産である。20世紀の邸宅が世界遺産となっている例は多いが、建築家の自宅そのものが世界遺産になっているのは珍しい気がする。ルイス・バラガンはメキシコの気候に呼応した色使いと、自然との繋がりの作り方の名手である。鮮やかな青や黄色、ピンクやオレンジの色が家中にふんだんに使われているのだが、それが派手に見えるどころか、スッキリと見えてしまうのだからすごい。ガイドさんによるとバラガンはなんと土木学科の出身であり、ほぼ独学で建築を学んだのだという。孤独を好む「嫌な人」だったらしく、バラガン邸に友人を招くことはかなり稀だった。その人となりを語るエピソードのほとんどが、当時邸宅で...15Mar2018
世界のメトロの比較今学期は先に書いたジョアン・バスケッツという建築家・都市計画家の設計スタジオをとっている。敷地は、日本の建築家の黒川紀章が都市計画を手がけた、中国の鄭州(ZHENGZHOU)を対象にしている。鄭州は古代の殷王朝の首都だったことがあるぐらいで、北京や上海に比べて長い間小さい都市だった場所だ。地理的には中国の主要都市の中心に位置していて、1950年代に中国全土を走る鉄道が整備された後に、工業や運輸の中心として発達した。この60年間で鄭州のサイズは指数関数的に拡大し、75倍にもなったとのことだ。2000年台後半には黒川紀章が設計した鄭東新区という東側の区域が着工し、現在も建設が続いている。そのスケールがあまりにも大きく、入居が追いついてい...08Mar2018
フランク・ロイド・ライトの最小限住宅ワシントンDC方面に旅行をした際に、フランク・ロイド・ライトの設計した住宅を訪問する機会があった。フランク・ロイド・ライトと言えば、近代建築史のビック3のうちの1人で、彼が設計した建物は神戸にある山邑邸にしか見たことがなかった。今回訪問したポープ・レイリー・ハウス日本では名前も出ないようなマイナー作品で、日本語でグーグル検索しても情報は出て来ない。ポープ・レイリー・ハウスは大金持ちの邸宅ではなく、一般家庭向け(とはいえ中上流ではあるが)を目指した最小限の住宅である。L字型の平面形をしており、交点にあるエントランスを中心に、一方の辺にはリビングやダイニングなどの共用部が、もう一方の辺には寝室などのプライベートな空間があるという、理にか...05Mar2018