バイネッキ貴重書・手稿図書館イエール大学の建築群の中でも度肝を抜かれたのが、SOMのゴードン・バンシャフトによって設計されたバイネッキ貴重書・手稿図書館である。建物の四方全面が、プレキャストコンクリート枠に嵌め込まれた、32mmにスライスされた大理石のカーテンウォールという、世界に類を見ない建築だ。建物の外観はその特徴的なカーテンウォールで囲まれた、立方体の石の固まりのようになっている。日本だと建築主から「台風が来てものが飛んできて石が割れたらどうするんですか?」と言われて却下されそうな、とても壊れやすいファサードだ。目立たないように最小限の高さに抑えられた1階から、建物の中には入ることができる。03Nov2018
イエール英国芸術センター夏休みの間にイエール大学のあるニュー・ヘイブンに行く機会があった。ボストンから車で2時間半ほどの距離にあり、建築に興味があるのであれば是非行った方が良いという、誰もがおすすめする場所だ。ニュー・ヘイブンの綴りはNew Havenで、天国を意味するHeavenとは微妙に違っている。Havenは港を意味し、ボストンやニューヨークに次ぐ新しい港町という位置づけだったのだろう。ネイティブスピーカーの人に聞くと、天国の方をヘブンと発音するのであれば、ヘイブンの方が近いらしい。ニュー・ヘイブンはピザが有名で自分たちはフランク・ペペ・ピッツェリアという場所で食べた。これは地元っ子の中での三大ピザ屋のうちの一つで、ニュー・ヘイブンの人たちはその三つ...27Oct2018
ソーク研究所ルイス・カーンによる代表作中の代表作だ。この建築は人生の中で一度は見ておきたい建築のうちの一つであった。ソーク研究所はロサンゼルスの市内から2時間ほどドライブしたところにある。ポリオウイルスに対抗するワクチンを開発したジョナス・ソーク博士が設立した生物医学系の研究所で、ノーベル賞受賞者も数々輩出している名門だ。見学の日程は限られていて、ソーク研究所の見学予約が取れたところにあわせて、ロサンゼルス旅行の日程を組んだぐらいだ。建物の最大の特徴は、太平洋を望む中庭空間だ。それを挟み込むようにして建つルイス・カーンの設計した建築も確かに格好良いのだが、そこにいる人が見るものは建築ではなく、建築によってフレーミングされた海や、空、雲、天気の移...20Oct2018
アンディ・ウォーホル美術館夏休み前にピッツバーグでアンディ・ウォーホル美術館に行く機会があった。アンディ・ウォーホルとは、ピッツバーグ出身の言わずとしれたポップ・アートの父である。アンディ・ウォーホルの言質としてよく取り上げられる「僕を知りたければ作品の表面だけを見て下さい。裏側には何もありません」で述べられているように、社会で流行っているもの、大量に流れる情報の表層的なイメージを、徹底的に表層的に描くという表現を発明し、極めた存在とも言える。13Oct2018
都市の歩行者活動の定量化今学期はApplied Urban Analyticsという都市デザインのデータサイエンスがテーマの授業を取っている。担当の先生はGSDの教授であるアンドレス・セブチェスク(Andres Sevtsuk)で、都市の中での歩行者の交通量などを計算できるRhinoプラグインツールUNA Toolboxの開発者でもある。優秀過ぎて、まだ30代なのにGSDの教授職なのである。ボストンのMIT、Harvard周辺で勉強していると、本当に世界各地から才能が集まる場所なのだということをひしひしと感じる。若くして、世界規模で影響力のあるツールを開発したり、天才的とも言える業績を挙げていたりする人がゴロゴロいる。もちろん有名でなくても「何でこの人こん...06Oct2018
重なり合う"マイアミ"今学期はマイアミが敷地である、都市デザイン+建築+ランドスケープの学生が対象のスタジオを選択している。近年のGSDは南米、アフリカ、アジアなどの発展途上国を対象としたテーマが多かったのだが、今年からナイト財団からのサポートを受け、アメリカの都市をどう変えていけるかというテーマにも、新たにフォーカスするようになった。大統領選を通じて日本でも頻繁に報道されるアメリカの分断や、重工業で栄えた都市の衰退、テック企業の躍進による極端な富裕化や、特定の富裕層のために投資が集中する都市など、デザインにより解決しなければない課題は大量にあり、学長であるモーセン・モスタファビの肝いりのスタジオでもある。マイアミのスタジオはそんな「アメリカン・シティ」...26Sep2018
全米オープンテニスの楽しみ方8月末には小さい頃からの夢でもあった、全米オープンテニスの観戦に行った。中学生の時にテニスを始めてから、グランドスラムのトーナメントはずっとテレビで見ていて、スタープレーヤーであるフェデラーやナダル、ジョコビッチのプレーを生で見るのが夢でもあった。上に名前を挙げたようなプレーヤーは自分が高校時代から活躍しているのにも関わらず、嬉しいことにまだまだ現役(それぞれが今の世界ランキングの1-3位)でもある。こんなに時間が経っても、まだ世界最高レベルにある彼らのプレーが見られるのは本当に運が良いと思う。特にフェデラーを見たいという気持ちが強かった。一度、フェデラーが日本の楽天オープンに出場するということがあり、頑張って決勝の有明コルシアムの...16Sep2018
地下鉄での出来事ああここはアメリカなんだなと感じる出来事が、ボストンで地下鉄を待っている時にあった。平日の18時ごろにインターン先から地下鉄で家に帰るつもりでホームで並んでいた。電車が遅れていることと、帰宅ラッシュの時間に重なったことで、ホームの上は人で溢れ、熱気が充満している。その時、冷房があまり効いていないホームでいつも回っている扇風機に誰かがぶつかったらしく、回転する羽に何かが挟まる「ダダダダダダッ」という音がした。自分は普通に、ホーム上が混んでるからだれかが間違って扇風機にぶつかったんだなと思い、そう思って平然としていた。しかし、周りにいる人達の反応がまるで違う。恐怖にすくんでいるような空気感がある。そこで気づいたのが、扇風機にものが巻き込...15Sep2018
GSDな自分 4.0GSDの修士課程での2年目が始まった。1年目は殆どが必修や半必修で1学期あたり1授業しか自由度がなかったのに対し、今学期からは1つのスタジオ、3つの授業がほぼ自由に選択できるようになった。スタジオは是非、建築分野のものを取りたかったのだが、抽選の結果、マイアミが敷地の都市デザイン+ランドスケープ系のスタジオに参加することになった。先学期は自分のセーフゾーンで勝負してしまった感じがあった。今学期はなんとしても自分にとっての「挑戦」となる授業を選択したかった。先週までが授業を選ぶ期間で、最終的には都市デザインの歴史+理論、都市デザインのデータサイエンス、そしてMITメディアラボで行われるインターフェイスデザインの授業を取ることにした。歴...09Sep2018
アメリカ東海岸での環境設計の考え方GSD留学前に、アメリカ西海岸を代表するUCバークレーに訪れ、LOISOS+UBBELOHDEから環境設計について学ぶ機会があった。カリフォルニアでは将来のゼロエネルギービルの義務化(ゼロエネルギービルでないと確認申請が下りない)を視野に入れているほど先進的なため、環境設計のメインのフォーカスはいかにゼロエネルギーにするかという点だった。また、サンフランシスコの気候は1年中殆ど快適な範囲なため、壇冷房エネルギーの減少を重視するというよりは、自然光をどれだけ利用して照明エネルギーを減らすかというところも重視されていた。一方で東海岸の環境設計の雄とも言えるのがPayetteだ。先述のように建築事務所の中で数少く、内作で環境設計部門を持っ...25Aug2018
RevitにおけるDynamoの可能性RevitというのはAutodesk製のBIMソフトのことだが、そこに最近は標準搭載されるようになったDynamoというプラグインがある。DynamoはRhinocerosに対するGrasshopperと同様に、CAD上でのモデリング作業をプログラミングできるツールだ。CADでプログラミングするというのは何事かというと、階段をモデリングするとか、窓のサッシをモデリングするとか、どうしても繰り返し作業になってしまうモデリング作業をプログラムすることだ。「この点からこの点を結ぶこの線をベースとして○段の階段を作る」といったことをワンクリックで行えるようになる。RhinoのプログラミングツールであるGrasshopperというプラグインは...18Aug2018
日本でなぜBIMが普及しないのかPayetteでのインターン期間中では、詳細設計図のまとめに関わることができた。先述した通り、Payetteは図面は全て完全にBIM(AutodeskのRevit)で描いている。日本の導入の遅れから見ればとても差を感じるのだが、これは何が原因なのだろうか。PayetteがどうやってBIMで全ての図面を描いているのかポイントを挙げながら分析したいと思う。アメリカの事務所では一般的なのかもしないが、デザインをせずに図面だけ描くというCADオペレーターという概念がない。いわゆる建築設計というデザインする職種の4~5人のチームで5000平米程度のプロジェクトの図面を手分けして描いている。BIMに触らないのは50代のグループ長クラスの1人だけ...11Aug2018