ルーというチームメイト設計スタジオの最終課題にあたってチームを組んだのが清華大学出身、学部を卒業したばかりのルー(ZHILE XIE)という学生だった。これが超絶に強烈かつ優秀なチームメートだった。ルーはもちろん建築学生だが、アートの分野に強いセンシティビティと興味がある。自分の作品をどう見せるか、どう文章で説明するかということについての執念がものすごい。表題の写真もそうであるが、Instagramにも常に「普通でない」表現の写真を載せ続け、普段は小説を書くのが趣味だという。小説の内容は―ニューヨークに出稼ぎに来るもののそのコミュニティに馴染めず悩んでいた若者のもとにその生活を揺るがす人が現れる―といった感じで純文学のようだ。アーティスト的な資質が強いの...10Dec2017
西へと向かう力GSDのアーバンデザインの第4課題は、NY、シカゴ、LAにある決められた3つの敷地の中から1つを選択し、集合住宅を含むコンプレックスを設計することであった。設計は2人チームで行う決まりで、自分は清華大学出身の24才、ルーと組むことになった。ルーはとても強烈なキャラクターの持ち主だったので後記する。自分たちはLAの敷地を選んだ。ヴェニスビーチの近くにある駐車場の敷地で、幅が50mで長さが300m以上のとても細長い形状である。周辺の街区のグリッドの中からどこか取り残されたような雰囲気が印象的だった。古い航空写真や地図から歴史を紐解いてみると、20世紀初頭には鉄道のレールとして周囲の街区を切り開くような形で敷設が行われた場所だった。その後...07Dec2017
浮世絵の展覧会先日ボストン美術館に行ったところ、歌川国重と歌川国貞を対照的に並べた浮世絵の展覧会をやっていた。日本国外最大級の日本美術コレクションを持つ、ボストン美術館ならではの展示である。考えてみれば、浮世絵の展覧会というものを日本で見た経験はほとんどなかった。馬頭広重美術館や墨田葛飾北斎博物館でも浮世絵の展示は見たのだが、どちらも超有名建築家の設計の建物なので、何となく集中しきれてなかったのだろう。絵を見てみると、確固とした様式の中での表現、新しい手法をそこにどう取り入れるかという試みなど、2人の異なるアプローチが印象的だ。どちらも素晴らしいのだが、国貞の方がやや華やかな気がする。また、浮世絵は当時の文化を牽引するメディアだったので、市民の生...26Nov2017
ランドスケープを巡る旅 2旅の最初の目的地はストーム・キング・アートセンターだった。既存の土地の形状を活かした超広大な中に超有名な作家の彫刻が点在している施設だ。Alexander Libermanの作品など、東京では新宿か丸の内の公開空地にどんと置いてあるのを見れるぐらいなのだが、ここではその彫刻にあったスケールの大自然の中で見ることが出来る。すると、アートと周辺環境の対話が明確に見えるのはもちろん、アートと人との関係も都市でのそれより多様になってくる。ランドスケープのスケールというものは、建築とは違う力がある。ぱちぱちと写真を撮っていると、三谷先生から「ランドスケープは逆光で写真を取るのが良いよ」とアドバイスされた。ランドスケープの写真を取る時は自ずとカ...19Nov2017
ランドスケープを巡る旅 1ランドスケープ事務所のスタジオ・オンサイトを主宰し千葉大学の教授でもある三谷先生が、今学期GSDにてスタジオを一つ持っている。秋学期中の期間は全てボストンに滞在しているとのことだ。そのスタジオのサブの先生として、東大建築の教授の千葉先生もいて、1ヶ月ほもの期間ボストンに滞在していた。三谷先生の発案で、ニューヨーク近郊のニューバーグという街にある、2つのランドスケープのプロジェクトを巡る小旅行をすることになった。GSDの日本人学生の中で運転・同行をする人の募集があり、そこに応募したという流れだ。最終的には、三谷先生、川島とその妻、千葉先生とその彼女という5人で行くことになった。ニューバーグまでは4時間ぐらいのドライブになるので、7人乗...12Nov2017
ハイラインというのは言わずと知れたニューヨークにある公園だ。廃線となった高架の上を都市公園として整備したプロジェクトで、建築的にも、都市デザイン的にも、ランドスケープデザイン的にも、世界中で参照され続けているような伝説的なプロジェクトである。そのため、「ニューヨークで働いていて、朝はハイラインでランニングするのが日課だ」なんていうのが建築学生の夢だったりもする。そんなプロジェクトを先日訪れることができた。端から端まで体験したかったので、北端の34 st. 11-12 ave. に位置するスタート地点から歩き始めた。ハイラインが周辺の土地の価値を高めたおかげで、高層ビルの開発も周りで進行している。歩いていってもハイライン自体のデザインが場所によ...08Nov2017
評価の平等性今学期のスタジオもファイナルが見えてきた。日々の作業量は増えていくばかりだが、何とか生き残れるように這いつくばりながら過ごしている。こちらで設計の授業を受けていて印象的なのは、評価の平等性だ。自分がいた日本の大学の建築学科では、基本的には先生の好みに応じてコメントをもらえる案はもらえて、無視されるものは無視されるという評価の仕方だった。そのため、設計の授業を理不尽に感じて、設計を続けることを辞めてしまう学生が多数おり、卒業後も続ける学生は全体の1/6にも満たない。一方で、GSDの設計の授業では全ての学生に必ずコメントがされ、評価の平等性を強く感じる。MAUDに所属する学生は実務経験があるか5年制の建築学科を卒業した上で、それでもなお...07Nov2017
ハイブリッド・フォーメーションというのは授業のタイトルだ。3dsmaxを使った3Dモデリングと3Dプリンターをつかったデジタルファブリケーションを学ぶ。GSDの中でもMarchⅠかⅡの学生の履修が多く、自分のような都市系の学生は1人しかいない。履修した理由は、アメリカ来たからにはごりごりの3D系のクラスを取りたかったのと、読書系のクラスではない気分転換になる授業をやりたかったからだ。授業を教えているのはヴォルカン・アルカノグルというイギリスのフューチャー・システムズ出身の建築家・3Dアーティストである。ゴリゴリの三次元系の造形に強く、各地でパビリオンやアートのプロジェクトを行っている。3Dモデリングを使った造形の分野で実作品を継続的に作って活躍できている、世界で...27Oct2017
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館週末にボストンの美術館めぐりをした。海外で最大の日本美術コレクションを持つと言われるボストン美術館は当然すごい。だが自分にとって印象的だったのは、そこから徒歩10分ぐらいの距離にある、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館だった。近年はレンゾ・ピアノによる増築で有名だが、美術館としてのスタイルが今まで見たこともないものだった。美術館の名前の由来は、このコレクションを作り上げた人物の名前そのものである。資産家かつ目利きだったイザベラは、自分のコレクションの展示のための邸宅を建て、それが現在の美術館となっている。彼女が1924年に死去してから、今でも当時と変わらない配置で美術品が展示されている。その展示のスタイルは異色だ。普通の美術館...23Oct2017
形と形式の違い建築・都市デザイン学科の設計スタジオの第二課題は、アメリカの代表的な都市の1ブロックにデザイン提案をするものだ。ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスの三都市の中から1つを選び、それぞれの都市の特性に合わせて取り組む必要がある。どれも京都と同じ碁盤の目のような都市なので、その標準サイズのグリッドに対する提案は、ある程度どの場所にでも適用ができる。その課題説明の中で口酸っぱく言われたのが、「形と形式の違いを見極めてデザインしなさい」ということだ。元の英語の言葉で言うと、形"Form"と形式"Type"の違いをしっかり理解することが重要だ。その差は何か。形"Form"は、どんな形でも良い。直方体も形だし、流線型も、球もなんらかの形だ。機能が...17Oct2017
グッゲンハイム美術館8月にニューヨークを訪れた時に感動した建築のうちの一つが、フランク・ロイド・ライト設計のグッゲンハイム美術館だ。ニューヨークを旅行した友達の殆どがら、良かったということを聞いていた建物なので、ずっと気になっていた。最寄りの地下鉄から歩いて10分ぐらい、セントラルパークに面した道沿いにグッゲンハイム美術館がある。同じ駅で下りる観光客の中にはニューヨーク最大のメトロポリタン美術館に行く人もいるので、交差点で曲がる方向で観光客の興味の違いがわかり、ちょっと面白い。11Oct2017
英語の思考のレベルこちらに来て3か月が経とうとしている。英語のスキルは徐々に向上しているが、日本で使っていた英語のレベルと、現地の大学院で本格的に学ぶための英語はレベルがあまりにも違うので、正直ついていくのに必死である。まずは読むこと。文書化されているものが語彙のレベルが一番高いので、読書の課題をこなす際には辞書が必須だ。漫然と辞書を引くことを繰り返しても成長がないので、調べた単語は単語帳に記録し同義語や例文も併記することで、なるべく頭の中に残るようにしている。すると、少しずつではあるが、普段から使える単語が増えてくる。次は聞くこと。これだけは自然にスキルが上がることに期待するしかない。授業で話されるような内容の大抵はわかる。ただ、ものすごく早口な人...01Oct2017